親鸞聖人のお歌の心を読み解くサイト

恋わずらいに苦しまれる親鸞聖人1

Posted on 16th 9月 2009 by はるき in 親鸞の苦悩

 京都東山の青蓮院にて、師匠の慈鎮和尚から大喝され、再び比叡山に戻られる途中、ふもとの赤山明神で、不思議な女性に会われました。

「親鸞さま。お願いでございます。どうか、いつの日か、すべての人の救われる、真実の仏教を明らかにしてくださいませ。親鸞さま、お願いでございます」

 女性の言葉は、聖人の肺腑をえぐり、その美しい面影とともに、聖人の心に刻みつけられたのです。

「あー、何という美しい女性か。この世にあんな女性(にょしょう)があったのか……。仏の化身か。はたまた魔性の女か……」

 女性のあまりの美しさに心奪われてしまった聖人でした。

 その頃、源平の合戦で敗れた平家の落ち武者たちは、平家一門は皆殺し、という厳しい源氏の追求を逃れるため、にわか坊主となって治外法権の比叡山に潜んでいました。源氏の目をごまかし、身を守るために坊主となった彼らと、親鸞聖人は一緒に修行されねばならなくなったのです。

 彼らは昼間こそ、殊勝そうにしていましたが、夜になるとかつての酒池肉林が忘れられず、山を抜け出しては、祇園や島原の遊女と、戯れていたのでした。夜が白々と明けてきた頃に山に戻って、修行のフリをするが、寝ずに遊んでいたので、居眠りばかり。このようにして山門の風紀が大変乱れていったのです。

 ある夜、にわか坊主たちの甲高い笑い声が聞こえてきます。

「おい、息抜きに行こうじゃないか」
「今日は、どこへ行く?」
「あのベッピンのいる店はどうじゃ」
「あそこは酒がまずくてアカン。もっとうまい所を知っとるぞ」
「あーあ、もう、どこか酒もうまくて女もいい所はないもんかいのー」
「そんなうまい話あるもんか」
「ウハハハハハ!」

 聖人それを横目で見られながら、

「ああ、何たることか。源氏の目をごまかせても、仏さまの目はごまかせないのだ。オレだけでも、仏さま相手に戒律を守り抜いて見せるぞ」と、ますます、教えの通りに身を浄め、真面目に修行なされたのです。

 聖人がある石仏に、合掌せられている時でした。その石仏の顔が赤山明神で出会った女性の顔に見えるではありませんか。そして女性の優しい声がします。

「親鸞さま、親鸞さま」

 激しく首を振って、邪念を振り払おうとされます。仏さまのことばかり考えねばならないのに、経典を読んでいても、文字の上に女性の顔が浮かんでくる。振り払おうとして、夜の道を駆け出していかれるが、まだ声が響いてきます。

「親鸞さま、親鸞さま」

 聖人は起きている時はもちろん、寝ては夢の中にまで、女性のことが忘れられず、恋わずらいに苦しまれるようになったのです。(つづく)

コメントは受け付けていません。

コメントはまだありません

コメントはまだありません。

コメントフォームは現在閉鎖中です。